お腹をつまむと、指の間にむにっと残るあの感触。「ここに脂肪の塊がある」と、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
では、その塊は体のどこに、どんな形で入っているのでしょう。
答えは少し意外です。体の中には、溶かしたり揉み出したりできるような「脂肪の塊」は入っていません。
塊に見えて、じつは小さな細胞の集まり
豚の脂身も、お腹のお肉も、目には一つの塊に見えます。けれど拡大してみると、そこにあるのは直径0.1ミリほどの「脂肪細胞」がびっしり並んだ姿です。
脂肪は、この細胞の一つひとつの中に、しずくのようにしまわれています。大人の体にある脂肪細胞は数百億個。太るとは、この小さな袋が一つずつふくらんでいくことなのです。
それでも私たちは、「脂肪を燃やす」「溶かす」「流す」と、まるで一つの物のように脂肪を語ります。広告では、黄色い塊が炎で溶けていくイラストもよく見かけます。そんな絵を何度も目にするうちに、「脂肪=塊」というイメージが頭に住みついてしまったのかもしれません。
燃やした脂肪は、吐く息になって出ていく
では、脂肪が減るとき、細胞の中では何が起きているのでしょう。
体のエネルギーが足りなくなると、脂肪細胞は中身を少しずつ分解して血液に送り出します。運ばれた脂肪は筋肉などでエネルギーとして使われ、最後は二酸化炭素と水になります。

ある計算では、10kgの脂肪のうち約8.4kgが二酸化炭素として息から出ていきます。あなたが燃やした脂肪の大部分は、吐く息に乗って空気の中へ消えていくのです。
そして中身を出した脂肪細胞は、消えずに小さくなって残ります。
揉んでも巻いても、細胞の中には届かない
脂肪が細胞の中にあると分かると、見えてくることがあります。
お腹を揉んでも、細胞の中身を外へ押し出すことはできません。お腹だけを狙って落とすのも難しい。分解の合図は、血液に乗って全身に届くからです。
これまでうまく痩せられなかったとしたら、それはあなたの意志や体質のせいではなく、「塊」という前提がずれていたせいかもしれません。
細胞に届く、たったひとつの道
細胞の中の脂肪を減らす方法は、突き詰めれば一つだけ。体が使うエネルギーが、食事から入るエネルギーを上回る状態を、無理なく続けることです。
食べる量を少し見直す。よく歩く。筋肉を落とさない。よく眠る。どれも地味ですが、脂肪が細胞の中にある以上、そこに届く確かな道はこれしかありません。
体重計の数字は、水分だけでも毎日上下します。一喜一憂せず、週単位でゆっくり見ていきましょう。
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参考
- Meerman R, Brown AJ, When somebody loses weight, where does the fat go?, BMJ, 2014;349:g7257(脂肪10kgのうち約8.4kgが二酸化炭素として出ていく計算) — PubMed
- Spalding KL, Arner E, Westermark PO, et al., Dynamics of fat cell turnover in humans, Nature, 2008;453(7196):783-787(大人の脂肪細胞の数と、減量しても数が変わらないこと) — PubMed
- Li Q, Spalding KL, The regulation of adipocyte growth in white adipose tissue, Frontiers in Cell and Developmental Biology, 2022;10:1003219(脂肪細胞の大きさ) — PubMed
