「代謝を上げる」とは、何が上がること?

「代謝アップ」の広告の前で考えるタクさん

「代謝を上げて、脂肪が燃えやすい体に」。そんな言葉を見かけると、体の中のスイッチが切り替わり、何もしなくても脂肪が減っていく姿を思い浮かべてしまいます。

けれど、代謝が上がるというのは、体質が別物に生まれ変わることではありません。中身を知ると、どこに力を入れればいいかが見えてきます。

「代謝」は、脂肪を燃やすことだけではない

代謝とは、体の中で起きている化学反応をひっくるめた呼び名です。食べたものを分解してエネルギーを取り出すことも、そのエネルギーで筋肉や骨をつくり直すことも、すべて代謝に含まれます。

ですから「代謝を上げる」を正確に言い直すと、「1日に使うエネルギーの量を増やす」ということになります。脂肪だけを狙って燃やす特別な仕組みが、別に用意されているわけではありません。

「代謝アップ」という言葉は、飲み物や食品の宣伝でもよく目にします。そのため、何かを口にすれば体が燃えやすく切り替わる、という印象を受けやすいのかもしれません。

消費の約6割は、じっとしていても使われる

1日に使うエネルギーは、大きく三つに分けられます。心臓を動かしたり体温を保ったりする「基礎代謝」が約6割、体を動かす「身体活動」が約3割。残りの約1割が、食べたものを消化・吸収するときに使う「食事誘発性熱産生」です。

1日の消費エネルギーの内訳(基礎代謝・食事・活動)

いちばん大きい基礎代謝は、主に体の大きさや筋肉の量、年齢、性別で決まります。自分の工夫で、短い期間に大きく動かせるものではありません。

食事による分は、主に食べた量に応じて増えるものです。特定の飲み物や食品を一つ加えたところで、1日の合計が目に見えて変わることは期待しにくいのです。

自分の手で増やせるのは、「動く」の部分

三つのうち、その日の過ごし方でいちばん大きく変えられるのは身体活動です。これは運動だけでなく、歩く、階段を使う、家事をするといった日常の動きも、すべて含みます。

同じくらいの体格の人どうしでも、人によって差が大きく出るのがこの部分です。座っている時間が長い人ほど、こまめに立って動くだけで、増やせる余地が大きいと言えます。

一杯の飲み物より、10分の散歩

「代謝を上げる」という言葉そのものは、間違いではありません。ただ、それを飲み物や食品で手に入れようとすると、肝心の食べる量や動く量に目が向かなくなり、遠回りになりやすいのです。

まずは、今より10分多く歩く日を、週に何日かつくってみてください。買い物は一つ先の店まで歩く、電話は立って受ける。こうした小さな積み重ねが、毎日の消費を少しずつ押し上げていきます。

年齢とともに減りやすい筋肉を保つための軽い筋トレも、無理のない範囲で加えてみてください。地味に見えますが、これが「代謝を上げる」のいちばん確かな中身です。

参考

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」(2019年6月更新)(1日の総エネルギー消費量の内訳:基礎代謝量 約60%、身体活動量 約30%、食事誘発性熱産生 約10%。基礎代謝量が体格によること、日常の動きによる消費とその個人差) — 厚生労働省 e-ヘルスネット