ウォーキングを始めて、体がぽかぽかしてきた。お腹の脂肪が、火にかけたバターのように溶けて消えていくところを思い浮かべて、「今、燃えている」と感じる人もいるでしょう。
けれど、体の中で火が燃えているわけではありません。「燃焼」はたとえで、実際に起きているのは細胞の中の化学反応です。
脂肪は、溶けずにほどかれる
「脂肪燃焼」「脂肪を溶かす」といった言葉を日ごろから目にしていると、脂肪が本当に燃えたり溶けたりしているような印象を受けやすいものです。けれど体の中では、脂肪はもっと地道な手順で使われていきます。
脂肪細胞の中の脂肪は、中性脂肪という形でためられています。体がエネルギーを必要とすると、ホルモンの合図を受けて、細胞の中の酵素がこれを脂肪酸とグリセロールに分解します。
分解された脂肪酸は、血液に乗って運ばれ、筋肉などの細胞に取り込まれます。熱で溶けるのではなく、化学的にほどかれて、別の場所へ運ばれていくのです。

本当の「燃焼」は、筋肉の中で静かに進む
筋肉の細胞に届いた脂肪酸は、ミトコンドリアという場所で、酸素を使って少しずつ分解されます。このとき取り出されたエネルギーが、筋肉を動かす力になります。
酸素を使ってエネルギーを取り出し、最後に二酸化炭素と水が残る。この点では、確かに物が燃えるのと似ています。ただし炎も高い温度もいらず、体温のまま、何段階もの反応を経て静かに進みます。
「燃やす」というイメージのままだと、お腹を温めたり、汗をたくさんかいたりすることが、脂肪を減らす近道のように思えてしまいます。けれど、外から温めても、脂肪が溶け出すわけではありません。運動で体がぽかぽかするのは、筋肉が働くと熱も生まれるからです。
ほどいた脂肪は、使い切ってこそ減る
ここで大事なのは、脂肪細胞から出た脂肪酸も、使われなければ再び脂肪としてためられることです。脂肪を減らすには、「分解する」だけでなく、それを「使う」ことが欠かせません。
使い道をつくるいちばん確かな方法は、体を動かすことです。そして食べる量を少し控えれば、体は足りない分を脂肪から補おうとします。
この反応は、運動しているときだけのものではありません。座っているときも眠っているときも、体は脂肪を少しずつほどいて使い続けています。
「燃やす」という言葉に引っぱられず、「運び出して、使い切る」と考えてみてください。毎日の散歩も、ひと駅分の歩きも、その「使う」にきちんとつながっています。
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参考
- Talley JT, Mohiuddin SS, Biochemistry, Fatty Acid Oxidation, StatPearls(2023年1月更新)(ホルモンの合図による脂肪の分解と、筋肉のミトコンドリアでの脂肪酸の分解) — NCBI Bookshelf
- Meerman R, Brown AJ, When somebody loses weight, where does the fat go?, BMJ, 2014;349:g7257(使われた脂肪が最後に二酸化炭素と水になること) — PubMed
