「カロリー神話は崩壊した」は本当?

本を読みながら首をかしげるタクさん

「カロリー計算は、もう古い」「糖質さえ控えれば、お腹いっぱい食べていい」。本や雑誌でこうした言葉に出会い、肩の荷が下りたように感じた人もいるかもしれません。

けれど、崩れたのはカロリーという考え方そのものではありません。「カロリーの数字さえ合わせれば痩せる」という、単純すぎる見方のほうです。

「続かない」も「代謝が落ちる」も、その通り

まず、この主張にはうなずける部分がたくさんあります。食べる量をただ削るやり方は、空腹との我慢比べになりがちで、長くは続きにくいものです。

同じカロリーでも、何を食べるかで満足感は大きく変わります。たんぱく質や食物繊維の多い食事のほうが、お腹は落ち着きやすいと言われます。食品に書かれたカロリーも、体が実際に吸収する量とぴったり一致するわけではない、あくまで目安です。

さらに、体重が減ると、使うエネルギーも減ります。体が小さくなった分に加えて、体そのものもエネルギーを節約する方向に働くためです。「計算どおりに痩せない」と感じるのは、気のせいではありません。

天秤の傾きは、今も変わらない

それでも、体脂肪が増えるか減るかは、入ってくるエネルギーと使うエネルギーの差し引きで決まります。代謝が落ちるという話も、天秤の「使う」側が軽くなるということです。原則そのものが崩れたわけではありません。

入るエネルギーと使うエネルギーの天秤

カロリーをそろえたうえで、糖質を減らす食事と脂質を減らす食事を比べた研究があります。施設に泊まり込んで食事を厳密に管理したこの研究では、糖質を減らした側で、脂肪をため込む方向に働くとされるインスリンの分泌が下がっていました。

それでも、体脂肪の減り方で糖質を減らした側が上回ることはなく、むしろ脂質を減らした側がわずかに多く減っていました。短い期間の研究ですが、どちらの食事でも体脂肪はきちんと減っていました。

糖質を控えても、油は帳消しにならない

脂質は1gあたり約9kcalと、糖質(約4kcal)の倍以上のエネルギーを持っています。ご飯を抜いた分、脂の多い肉やチーズ、マヨネーズを好きなだけ食べれば、天秤は「入る」側に傾くこともあります。

糖質を控えると、最初の数日で体重がすっと落ちることがあります。ただ、その多くは体の水分です。そこで安心して量を気にしなくなると、体脂肪は思うように減っていきません。

カロリーは、方向を確かめる物差し

国内の肥満症の診療ガイドラインでも、治療の基本は食事療法で、減量には食事でとるエネルギーを減らすことが最も確かな方法だとされています。とはいえ、毎食のカロリーを細かく計算する必要はありません。糖質を控える食べ方が自分に合っていて、無理なく続けられるなら、それもよい選択です。

ただ、「いくら食べてもいい」という一言だけは、そっと外しておきましょう。揚げ物や油の量に気を配り、体重の流れで天秤の傾きを確かめる。それだけで、どんな食べ方を選んでも、大きく道を外れずにすみます。

カロリーは、自分を縛る鎖ではありません。進む方向を確かめるための物差しとして、手元に置いておけばよいのです。

参考

  • Hall KD, Bemis T, Brychta R, et al., Calorie for calorie, dietary fat restriction results in more body fat loss than carbohydrate restriction in people with obesity, Cell Metabolism, 2015;22(3):427-436 — PubMed
  • 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」第5章「肥満症の治療と管理」(2022年12月)(肥満症の治療は食事療法が基本で、減量には摂取エネルギーの制限が最も有効で確立された方法であること) — 日本肥満学会
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(2023年4月)(脂質1gあたり9kcal、糖質1gあたり約4kcalのエネルギー換算係数) — 文部科学省