ご飯やパンを食べると血糖値が上がり、インスリンが出る。インスリンは脂肪をためるホルモンだから、糖質を食べるほど太る。この説明を聞いて、なるほどと膝を打った人も多いのではないでしょうか。
けれど、この話は半分は正しく、半分は言い過ぎです。インスリンだけで、太るかどうかが決まるわけではありません。
インスリンが脂肪をためるのは、本当
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませるホルモンです。同時に、脂肪細胞に脂肪をため込むよう働きかけ、脂肪の分解にはブレーキをかけます。
ですから、「インスリンが脂肪の蓄積に関わる」のは生理学的な事実です。糖質を食べた後にインスリンが増えるのも、その通りです。食べたものから脂肪がたまるまでが一本の線でつながるので、とても納得しやすい説明だと言えます。
ただ、インスリンは生きていくのに欠かせないホルモンでもあります。糖質だけでなく、たんぱく質を食べたときにも分泌されます。また、脂質であれたんぱく質であれ、使い切れないほど食べれば、余った分は体にたまります。
同じエネルギー量で比べると、差は小さかった
では、インスリンを抑えれば、同じ量を食べても太りにくいのでしょうか。これを確かめるため、食事をすべて管理できる施設で、エネルギー量をそろえて「糖質を減らす食事」と「脂質を減らす食事」を比べた研究があります。
短期間の試験ですが、糖質を減らした食事ではインスリンが下がり、脂肪を燃やす量も増えました。それでも、体脂肪の減り方は、脂質を減らした食事のほうがやや大きかったと報告されています。同じような研究を数多く集めて分析した報告でも、エネルギー量がそろっていれば、両者の差はごくわずかでした。
一方で、減量後の体重を保つ時期に糖質を減らすと、消費エネルギーが増えたという研究もあります。また、太るとインスリンの効きが悪くなって分泌が増えることも知られており、どちらが原因でどちらが結果かは簡単には切り分けられません。研究の方法も含めて、専門家の間では今も議論が続いています。
選ぶ基準は、「続けられるかどうか」
糖質を控えて痩せた人がいるのも、確かな事実です。ただ、その大きな理由の一つは、食べる量が自然と減ったことだと考えられています。糖質を控えると食欲が落ち着くと感じる人もいれば、物足りなさから間食が増えてしまう人もいます。
大切なのは、インスリンを悪者にすることではありません。糖質を控えるか、脂質を控えるか。自分にとって無理なく続き、結果として食べる量を減らせるほうを選べばよいのです。
ご飯を少し減らして野菜やたんぱく質を足すのも、揚げ物をときどき焼き物に替えるのも、どちらも立派な方法です。なお、糖尿病の治療中の人は、食事を大きく変える前に主治医に相談してください。
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参考
- Hall KD, Bemis T, Brychta RJ, et al., Calorie for calorie, dietary fat restriction results in more body fat loss than carbohydrate restriction in people with obesity, Cell Metabolism, 2015;22(3):427-436 — PubMed
- Hall KD, Guo J, Obesity energetics: body weight regulation and the effects of diet composition, Gastroenterology, 2017;152(7):1718-1727.e3(インスリンが脂肪の蓄積を促すという考え方と、エネルギー量をそろえた研究の分析) — PubMed
- Ebbeling CB, Feldman HA, Klein GL, et al., Effects of a low carbohydrate diet on energy expenditure during weight loss maintenance: randomized trial, BMJ, 2018;363:k4583 — PubMed
