生の野菜や果物、発酵させた飲み物で「酵素」をたっぷり摂る。体の中の酵素が増えれば、代謝が上がって痩せやすくなる。そう聞くと、毎朝の習慣にしたくなります。
けれど、口から摂った酵素が、そのまま体の中で働くことはありません。
酵素が大切なのは、本当
酵素は、体の中のさまざまな化学反応を進める役目を持っています。ご飯をよく噛むと甘くなるのは、だ液の中の酵素がでんぷんを分解しているからです。食べ物の消化も、脂肪や糖をエネルギーに変える代謝も、酵素なしでは進みません。
これだけ大切なもので、言葉の響きもどこか体によさそうです。たくさん摂ればもっと働いてくれる、と考えたくなるのも自然なことでしょう。ただ、問題は口から入った後に何が起きるかです。
酵素も、胃に入れば「たんぱく質」
酵素は、たんぱく質の一種です。口から入ったたんぱく質は、胃の強い酸で形が崩れ、消化酵素によって細かく分解されます。生の食べ物に含まれる酵素も、この流れからは逃れられません。
肉や魚のたんぱく質と同じように、最後はアミノ酸などの小さな単位になって吸収されます。元の酵素の形も働きも、そこで失われるのです。食べ物の酵素が、そのまま血液に乗って全身に届き、代謝を手伝うわけではありません。
代謝に必要な酵素は、体が自分で作っています。材料は、食べたたんぱく質が分解されてできたアミノ酸です。「体の酵素は一生分の量が決まっている」という話を見かけることもありますが、これにも確かな根拠は確認されていません。
酵素より、材料と動く量を気にかける
困るのは、酵素を摂ることに気を取られて、肝心の食事がおろそかになることです。食事の代わりに飲み物だけで済ませると、たんぱく質が足りなくなり、かえって筋肉を減らすことにもなりかねません。
代謝を支えたいなら、酵素そのものより材料を気にかけるほうが近道です。肉や魚、卵、大豆製品などから、たんぱく質を毎食少しずつ摂ること。そして、歩く量を増やしたり軽い筋トレをしたりして、筋肉を保つことです。
野菜や果物は、ビタミンや食物繊維が摂れるので、食べる価値は十分にあります。加熱すると酵素が壊れるから意味がない、と心配する必要もありません。煮ても炒めても、野菜は野菜です。
飲み物で摂る場合は、糖分が多いものもあるので、栄養成分表示でエネルギーを確かめておくと安心です。
