筋肉を増やせば、寝ていても痩せる?

「筋肉がつけば寝ていても痩せる」とソファで寝転ぶタクさん

筋肉をつけて基礎代謝を上げれば、寝ている間も脂肪が燃えていく。そう聞いて、ジム通いを始めた人もいるでしょう。何もしなくても痩せていく体が手に入るなら、少しくらいきつくても頑張れそうです。

けれど、筋肉を増やして上がる基礎代謝は、期待するほど大きくはありません。

筋肉1kgが使うのは、1日13kcalほど

安静にしているとき、体の各部分がどれだけエネルギーを使っているかを見積もった研究があります。それによると、筋肉1kgが1日に使うのは約13kcal。脂肪1kgの約4.5kcalと比べれば3倍ほどで、筋肉のほうがエネルギーを使うのは確かです。

ただ、仮に筋肉を1kg増やせたとしても、1年間で増える消費は約4,700kcal。体脂肪1kg分(約7,000kcal)にも届かない計算です。砂糖入りの缶コーヒーを1本飲めば、増えた筋肉の何日分もの消費が帳消しになってしまいます。

しかも、中高年が筋トレで筋肉を1kg増やすには、数か月単位の時間がかかります。

基礎代謝の主役は、休まず働く臓器

筋肉は体重の3〜4割ほどを占めますが、基礎代謝に占める割合は2割ほどとされます。残りの多くを使っているのは、肝臓や脳、心臓、腎臓といった臓器です。

これらの臓器は、重さこそ体重のわずかですが、1kgあたりでは筋肉の十数倍から30倍以上のエネルギーを使っています。筋肉の取り分が小さく見えるのは、臓器がそれだけ大食いだからでもあるのです。

筋肉が増えれば、基礎代謝はたしかに少し上がります。「寝ていても痩せる」は言い過ぎでも、まったくの間違いというわけではないのです。

筋肉は、起きている時間の味方

筋トレの本当の価値は、寝ている間の消費ではなく、起きている間の体を支えることにあります。立つ、歩く、階段を上る、重い荷物を持つ。筋肉が保たれていれば、こうした毎日の動きが楽になり、動く量そのものを保ちやすくなります。

食後に血液中の糖を取り込む場所としても、筋肉は大きな役割を担っています。また、食事を減らして痩せるときは、脂肪と一緒に筋肉も落ちやすくなります。50歳以上の人を対象にした研究を集めて分析した報告では、食事制限に運動を組み合わせると、筋肉などの落ち方が小さくなっていました。

痩せるための主役は、やはり食事と毎日の活動量で、筋肉はそれを支える土台です。体重計の数字だけで、筋トレの成果を測らないことです。階段で息が切れにくくなった、荷物を持つのが楽になった、そうした変化こそが、筋肉が働いているしるしです。

参考

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」(ヒトの臓器・組織における安静時代謝量:1kgあたり1日に骨格筋約13kcal、脂肪組織約4.5kcal、肝臓約200kcal、脳約240kcal、心臓・腎臓約440kcal。骨格筋が体重の約4割、安静時代謝量の約2割を占めること) — 厚生労働省 e-ヘルスネット
  • 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」参考情報「身体活動とエネルギー・栄養素について」(2024年1月)(体脂肪1kgを減らすのに必要なエネルギー量は約7,000kcal) — 厚生労働省
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(2023年4月)(加糖の缶コーヒー〈コーヒー飲料 乳成分入り 加糖〉100gあたり38kcal) — 文部科学省
  • Weinheimer EM, Sands LP, Campbell WW, A systematic review of the separate and combined effects of energy restriction and exercise on fat-free mass in middle-aged and older adults: implications for sarcopenic obesity, Nutrition Reviews, 2010;68(7):375-388 — PubMed
  • Peterson MD, Sen A, Gordon PM, Influence of resistance exercise on lean body mass in aging adults: a meta-analysis, Medicine & Science in Sports & Exercise, 2011;43(2):249-258(50歳以上で筋トレを平均約20週続けたときの、除脂肪量の増加は平均約1.1kg) — PubMed