1日1万歩、歩かないと意味がない?

歩数計を見てため息をつくタエコさん

夜、スマートフォンで今日の歩数を見たら、まだ5,000歩。「また1万歩に届かなかった。これじゃ意味がない」と、がっかりしたことはありませんか。

けれど、1万歩は、越えなければ効果がないという線ではありません。それより少なくても、歩数が増えるほど体にはいいことがあります。

1万歩は、覚えやすい合言葉

1日1万歩という数字は、1960年代に日本で歩数計が広まったころから使われ始めたとされます。きりがよく、目標にしやすい数字だったのでしょう。

ただ、この数字は、研究によって「ここを越えれば効果が出る」と決められた境目ではありません。

忙しい毎日の中で、1万歩を欠かさず続けるのは簡単ではありません。届かない日が続くうちに、歩くこと自体をやめてしまう人もいます。

6,000〜8,000歩あたりで、効果は横ばいに

歩数と死亡リスクの関係を調べた15の研究のデータを、合わせて分析した報告があります。対象はおよそ4万7,000人。歩数が多い人ほど死亡リスクは低くなっていましたが、ある歩数を超えると、その下がり方は横ばいになりました。

横ばいになったのは、60歳以上では1日6,000〜8,000歩あたり、60歳未満では8,000〜10,000歩あたりと報告されています。また、最も歩数が少ないグループ(1日3,500歩ほど)に比べ、次のグループ(5,800歩ほど)でも、リスクははっきり低くなっていました。

厚生労働省の運動ガイドでも、歩くことやそれと同じくらいの強さの活動を、大人は1日60分以上行うようすすめています。これは約8,000歩に相当し、高齢者は1日40分以上、約6,000歩が目安です。1万歩は、むしろ高めの目標なのです。

今日の歩数に、少しだけ足す

大切なのは、1万歩の線を越えることではなく、今の自分の歩数を少しでも増やすことです。厚生労働省のガイドも、「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことを基本に置いています。

1日に体を動かす時間を10分増やすだけでも、生活習慣病や死亡のリスクはおよそ3%下がると推測されています。ふだん5,000歩の人なら、まずは昼休みに10分歩くところから始めてみてください。階段を使う、少し遠くの店まで歩くといった工夫でも、歩数は着実に増えていきます。

1万歩に届かなかった日を、「失敗」と数えるのはやめましょう。5,000歩の日にも、何もしなかった日とは違う価値があります。

参考

  • Paluch AE, Bajpai S, Bassett DR, et al., Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts, Lancet Public Health, 2022;7(3):e219-e228 — PubMed
  • 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月)(成人・高齢者の身体活動の目安と歩数、1日10分の増加による生活習慣病発症・死亡リスクの低下の推計) — 厚生労働省
  • Lee IM, Shiroma EJ, Kamada M, et al., Association of step volume and intensity with all-cause mortality in older women, JAMA Internal Medicine, 2019;179(8):1105-1112(「1日1万歩」の由来) — PubMed