順調に減っていた体重が、ある日を境にぴたりと動かなくなる。2週間たっても数字は同じで、「体が飢餓モードに入って、もう脂肪を手放さなくなったんだ」と思いたくなります。
けれど、体が省エネになるのは本当でも、脂肪の減少まで止まってしまうわけではありません。
省エネは、ブレーキであって停止ではない
体重が減ると、使うエネルギーも減っていきます。体が小さくなれば、その体を動かしたり保ったりするのに必要なエネルギーも少なくて済むからです。重い荷物を背負って歩くより、下ろして歩くほうが楽なのと同じです。
さらに、体の大きさから予想される分より、消費エネルギーがもう一段下がることも報告されています。「適応性熱産生」と呼ばれる反応で、ここまでは「飢餓モード」という言葉が指すものと重なります。
ただし、これは減るペースを落とすブレーキのようなものです。食べる量が使う量を下回っている限り、脂肪はゆっくりでも減り続けます。
飢えに近い暮らしでも、脂肪は減り続けた
第二次世界大戦の頃、アメリカで健康な男性たちに、半年間食事を大きく減らしてもらう研究が行われました。参加者の体には強い省エネが起きていましたが、それでも体重は半年で平均約4分の1(24%)減り、体の脂肪も大きく減ったと報告されています。
飢餓に近い状態でさえ、体は脂肪を守りきれなかったのです。ふだんの食事制限で、脂肪が一切減らなくなるとは考えにくいでしょう。
小さな減少は、水分の波に隠れる
減り方がゆっくりになると、今度は体の水分の上下に隠れて見えにくくなります。1日500kcal控えても、減る脂肪は1週間で0.5kgほど。一方、体重は、体の水分や食べたものの重さで、1日の中でもそれ以上に動くことがあります。
小さな減少が大きな波に埋もれて、数字の上では止まったように見えているだけ、ということも多いのです。
ブレーキがかかったら、少しだけ踏み直す
減量が進むほど減り方が緩やかになるのは、自然なことです。停滞は、体が減量に正しく反応している証拠でもあります。
ここで食事をさらに大きく削ると、筋肉まで落ちて、かえって使うエネルギーが減りかねません。焦って極端な方法に走るより、今のやり方を少しだけ整え直すほうが近道です。
まずは1週間ごとの平均体重と腹囲を、2〜3週間見比べてみてください。それでも動かなければ、小さくなった今の体に合わせて、ひと駅分歩く、間食を一つ減らすといった小さな調整を足せば十分です。
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参考
- Rosenbaum M, Leibel RL, Adaptive thermogenesis in humans, International Journal of Obesity, 2010;34(Suppl 1):S47-S55 — PubMed
- Leibel RL, Rosenbaum M, Hirsch J, Changes in energy expenditure resulting from altered body weight, New England Journal of Medicine, 1995;332(10):621-628 — PubMed
- Kalm LM, Semba RD, They starved so that others be better fed: remembering Ancel Keys and the Minnesota experiment, Journal of Nutrition, 2005;135(6):1347-1352(いわゆるミネソタ飢餓実験) — PubMed
- Dulloo AG, Jacquet J, Adaptive reduction in basal metabolic rate in response to food deprivation in humans: a role for feedback signals from fat stores, American Journal of Clinical Nutrition, 1998;68(3):599-606(ミネソタ飢餓実験のデータを分析し直した研究) — PubMed
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』情報シート:身体活動とエネルギー・栄養素」(2024年5月)(体脂肪1kgを減らすのに必要なエネルギー量は約7,000kcal) — 厚生労働省 e-ヘルスネット
- Hargrove JL, Heinz G, Heinz O, Modeling transitions in body composition: the approach to steady state for anthropometric measures and physiological functions in the Minnesota human starvation study, Dynamic Medicine, 2008;7:16(平均体重が69.4kgから52.6kgへ24%減ったこと) — Springer
